2012.12.01 Saturday
★ Moonrise

Nikon F3T Film
旅を始めて20年あまりが過ぎるが、旅を始めた基点、オーストラリアのBondi Beachという、下水で汚染された海がある、なんの変哲もない小さな町で数ヶ月を過ごした後、亜細亜のエーテルが恋しくなった私は地図を広げ、インドネシアのBali島へと移動した。
一眼レフに大きなズームレンズを装着し、バカでかい三脚を抱え、恐らく気負いながら、この小さな島を訪れたのだと思う。
写真家というものは、普通、自分が興味を持つ被写体を撮影するわけで、職業としてのカメラマンというものは、撮影する被写体の数ほど、その種類は存在する。
言い換えれば、カメラマンと一口に言っても、女性をとる人、風景を撮る人、海中を撮るのを専門にする人等、◯○カメラマンという専門職が、その対象物の数ほどあるといえる。
そんな中、私の生業としてのカテゴリーにあてはまるのは、なんなのか?解らずに20年経つ。
元々カメラを持つ気になったのは、ドキュメントの写真本、吉田ルイ子氏の「ハーレムの熱い日々」を読んだからで、私の場合「旅」そのものに興味が集中していた。
そして旅で撮った人物や、風景写真をみた人が、面白がってそんな私に仕事をくれるようになった。
バリ島や、インドへ行ってきたというと、「フォトジェニックなところだね」とよくいわれる事があるが、元来アマノジャクで、やみくもに人と迎合することが嫌いな自分の視点からは、そのどちらの風景も、既視感に悩まされる事になった。
人と違った写真を撮る。というと、語弊があるが,そのシーンに「自分」が写真機をもって、「シャッターを押す」事の「意味」を常に考えるようになった。
見せる写真から、私的な意味のある写真へ。
「そこ」に、「自分」がいて、「なぜ」写真を撮るのか?
常に自分に言い聞かせて、シャッターを押して来たように思う。
この写真は、夕陽がキレイなバリ島の有名スポット、タナロット(Pura Luhur Tanah Lot)へ夕陽を撮りに行った時に撮影したものだ。
観光地であるこの場所に着くと、観光客のにわかカメラマン、アマチュアカメラマン、プロらしき機材をもったカメラマンが、所狭しと撮影スポットに群がっていた。
当然、私はバッグからカメラを出す事も無く、美しい夕陽をぼんやり眺める事になった。
日が沈んだ直後、帰ろうと後ろを振り向いた風景は、そんなアマノジャクな私を感動させるに値したのである。